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UKの旅:ジョージ・ファーガソン元ブリストル市長

Updated: May 7, 2023


TOBACCO FACTORY with George Farguson

2018年10月22日、ブリストルにあるタバコファクトリーを訪問し、ショージ・ファーガソン元ブリストル市長の地方都市再生についてのお話をお伝えします。


ジョージ・ファーガソン

建築家、環境活動家、社会実業家。2011年42万都市のブリストル市長選に無所属で当選、その後地方都市再生に取り組む。すでに自転車都市、フェアトレード・シティとしての基盤のあったブリストルに、地域通貨のブリストルポンドや、再生可能エネルギーの普及に取り組み、ブリストルは2015年度のヨーロッパの「グリーン・キャピタルシティ」に選ばれ、ヨーロッパで最も住みやすい環境都市として世界的に知られるようになる。地方都市やコミュニティの再生、持続可能な地域づくりにおいてオピニオンリーダーとして知られる。



<タバコファクトリーについて>

この建物は昔は古いタバコ工場でした。昔、ブリストルはタバコ生産が街の一大産業であり、悲しいことにその歴史は多くの人命を犠牲にしてきました。タバコの煙や、スモー ク、アルコール、劣悪な環境状況など、間接的に人命を奪うことに加担していたという悲しい歴史をブリストルは持っています。1900年、ここブリストルには国際的大企業のインベリアルタバコという有名なタバコ会社の工場が存在していました。しかしイン ベリアルタバコ会社がタバコの生産所を別の場所に移したたことにより、非常に多くの人が職を失い失業し、このエリアは大不況に見舞われた結果、多くの個人経営店も閉店を余 儀なくされ、それにより犯罪が増大してしまいました。


そして工場跡地だったこの建物の解体計画が持ち上がり、建物をどうにかして残したいと考えて いた矢先に、近隣住民に「このビルを助けられないか」と頼まれたこともあり、結果24 年前に私自身でこのビルを購入することにしました。建築士として、それまでアパートやオフィス、店舗設計はしてきましたが、混合の商業施 設の開発には携わったことがなかったので、この建物の購入を機に、自分のやってみたかっ ことを試してみる良い機会と捉え、少ない資金で、スローアーキテクチャーという方法を用いて、コミュニティにとって必要な変化をゆっくりともたらすようなことを試してみようと考えました。

工場移転の前までは、タバコ工場はここのエリアの経済の中心であり、町の人々の大半が 工場で収入を得ていた一大産業だった為、そのタバコ産業に変わるようなものがないかと模索しました。当時はこの国では大体の『物』が日本製でしたし、現在では中国製です。それを考えると『物を生産する』という分野においては、もう私たちは昔のようには自国だけでは賄えないので、『物を生産する』ことではタバコ産業の代替えにはならないと感じ、そこで代わりの産業として『文化』や『芸術』や『劇』といったことでコミュ ニティのために何かが出来ないかを考えました。

最初にこのビルの1階に、シンプルな『劇場』を作りました。約300人を収容できる劇場です。 その劇場のお陰で、それまでこのエリアを訪れたことがないような地域の人たちも劇場に来てくれるようになりました。しかしこのビルには飲食店がなかったため、自分たちでカフェを作りました。そのあとデザイナーや建築家など個人経営者で、平凡な事務所を好まないクリエイティブな人々のための『オフィス』を作りました。最終的に2つのレストランと2フロアがクリエイティブな人のためのオフィスとなり、居住スペースも設けました。現在2つの劇場が入居していて、今晩その2つ目劇場がオープンします。それは小さな劇場でリハーサルから一人芝居など柔軟に多様なことができる劇場となっています。


このようにこの『建物』がこのコミュニティーにとり中心的な存在となったため、何か新 しいことを始めようと考えました。カフェバーにはビールが必要と感じ、自分自身もロー カルビールが好きだったこともあり、このビルの近くでブリストルで最初の独立したビー ル工場を始めました。そして次にパン屋さんを始めたいという人が現れたので、ビール工場の中にカフェとパン屋を併設したカフェをオープンしました。そしてそれからは、他に も個人経営者が次から次へ開業していき、現在では大きなスーパーに行かなくても個人経営店で殆どのものが揃えるようにまでなりました。

24年前、正直どのようなことが起こるかわからずに手探りで始めましたが、全ての試みが 私の期待をはるかに超えた素晴らしい結果となったと思います。そして、これらの試みが成功したことで、私がブリストルの市長に選出された時に、無所属だったこともあり、こ こでやってきた基本理念を同じように市政でも活かすことができました。


ブリストルは小さな村々で構成されいます。ほとんど全ての場所に昔ながらの村の名前が 残っていて、それらの名前がアイデンティティであり、夫々の特徴を表していて、その村々が一つになって街を構成しています。市長になる前に私がここで試みてきたこと、ここでの取り組みが広く知られるようになると、色々な人々が、街の外のことにおいてもサ ポートして欲しいとやって来るようになりました。


今ではとても多くの個人経営者同士が繋がり、ネットワークが出来上がっています。私自身も、それらの会社の数社と事業で関わりがあったり、取引をしています。それらのうちのいくつかの会社は営利を目的としない社会的企業だったり、中には利益が出ない企業もあります。ここを始める前に、私と数人でフェリーの会社を始めたことがありました が、会社は赤字経営でした。しかし赤字でありながらもそこでの仕事では喜びをたくさん得ることができました。

ここもシアターだけでは赤字ですが、カフェで補えています。物事には色々な側面があり、利益を上げる商業的側面を持つことは大事です。 現在は1階にある二つのシアターはタバコトファクトリー・アート・トラ ストに譲渡しましたので、彼らが経営をしています。また現在この建物もコミュニティ による共同所有にしている最中で、ゆくゆくはこの建物すべてをトラストのものにしてい くことで、この地域の劇場や文化、文化活動や社会活動をサポートし維持していけるようにする予定です。


ここのカフェで食事をしてくれる人々、この建物内の事務所を借りてい て家賃を払ってくれている人々、マーケットをしてくれている人々、すべての人々がこれらのことに関わり貢献してくれているのです。



<ローカリズムについて>

田舎と都市との関係が希薄になり交流することが無くなった現在、農家と消費者の繋がり も失われていきました。ブリストル近郊では3、4%程度の作物しか作られていなかったの で、私たちはまずは小さな農場を購入し、ここで消費するための作物やマーケット用の作物、ビール用のホップを育てることを始めました。これらのことを私一人がやっているわ けでなく、他の方々とネットワークを使い一緒に行なっています。私たちは適切なローカルエコノミーのサークル、ネットワークを再構築したいと考えています。このローカルエコノミーのネットワークは、健康やメンタルヘルスという点においても利点があります。


そして今、大企業へ挑戦する時がきたように思います。私がここで最初のビール工場を開業してからというもの、この10年でこのブリストルには新しく10社の個人経営のビール製造会社ができました。それは国内外の大規模ビール会社にチャレンジしていることになります。


これと同じようなことを農業分野においても挑戦したいと思っています。これらは小さな試みにすぎませんが、この基本理念を色々な場所で試みることで、最終的には独占企業へ影響を与えることが可能になると私は考えています。 大企業は自主的には変わろうとはしませんが、一人一人が『お金』をどのように使うか、 お金の使い方を考えるという個々の力により、大企業が変わっていくように仕向けることが必要です。そういうことを考えて、私は地域通貨『ブリストルパウンド』を作りまし た。ブリストルパウンドは全てのお店ではありませんが、多くのローカル個人経営のお店で使えます。私が市長だった時、私の給料はこのブリストルパウンドでの支払って貰っていました。私自身がブリストルパウンドが使える場所で食べたり、 様々なサービスを購買することで、地域経済がより循環するということに繋がったからです。

これらの試みは、小さな改革にすぎませんが、小さなことを積み重ねていくことで、大きな変化になると思っています。私がブリストルの市長だった時、私は常に小さなことを変えていきながら物事に変化をもたらすようにしてきました。 それには、より良い暮らしを実現するためにどうすれば良いか、『実践』を示すことが大切だ と考えました。当時、街の中の渋滞がひどかったため、通勤などの際に人々に車の使用の 機会を減らす取り込みをしました。車の乗り入れを減らすために、駐車場を減らしました。 人々をイラつかせるためにやったわけではなく、綺麗な空気や、子供達に遊ぶスペースを 提供したかったからです。車を減少させることで、車ではなく『人』のためのスペースを 作り、暮らしやすい健康的な街にすることがより重要だと考えたからです。今もこのビルに働く9割の人は車を使わず、自転車や徒歩、交通の期間を利用してサステイナブルな通勤 方法を選択しています。

​ローカルな街づくりにおいて重要なことは、競争よりも協力し合うということ、コーポレー ションするということです。先ほどお話ししたブリストルで個人経営をしている10社の ビール会社も、会社同士がとても仲が良い関係にあります。会社同士がコラボレーションをしたりもするので、数社が共同でビールを作ったりもしています。個人経営の会社は、 競争するよりも、協力し合うことで、より多くのものを得ることが出来きると思います。 勿論それぞれの会社が、自社製品が一番と考えてますが(笑)。ローカルビジネスではコラボレーションすることで色々なアイディアが生まれ、それが健康的な街づくりを可能 にする最適な方法だと私は考えます。 ​


本文訳:norina


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